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天才の苦悩『車輪の下』 ー受験生の悩みー

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どんな話?

ヘルマン・ヘッセの『車輪の下』を読みました。

主人公は町においてずば抜けて秀才だと評判のハンスです。

周りの人々が期待する中で、その重圧に押しつぶされそうになりながらも、猛勉強して、難関と言われる神学校に2位の成績で入学します。

期待に胸を躍らせて神学校での新たな生活が始まります。ハンスは神学校に入ってからも良い成績を取り続けて、優等生として一目を置かれます。

そして神学校で出会った、芸術家肌のハイルナーと親しくなります。ハイルナーは変わり者で、ある日学校で問題を起こしてしまったために、孤立していきます。ハンスはそんなハイルナーに対して、はじめは世間体を気にして距離を置きますが、友情のほうが大切だと気づいて、ハイルナーと仲直りします。以前に増して親しくなったハンスとハイルナーですが、学校では孤立を深めました。

ところがそんなハイルナーが突然、神学校を去ってしまいます。孤独になったハンスは成績が下がっていって、そんなハンスを教師は憤り、やがて軽蔑するようになります。

心身ともに弱ったハンスは故郷に戻ります。町の人々はハンスに期待して、神学校に送り出したために、学校をやめて故郷に帰ってきたハンスを馬鹿にして、気遣ったりはしませんでした。

神学校をやめて、将来への道を失ってしまったハンスは機械工の見習いになります。しかし堕落した生活の末に、酒に酔ったところを川の中のに落ちて、溺死してしまいます。

ハンスと受験生の悩みの共通点

車輪の下』での、物語りの前半におけるハンスの悩みは受験生の悩みと似ているのではないでしょうか。

周りの人々からの重圧

ハンスは、町の人々や父親から大いに期待されて神学校の試験に臨みました。

試験のために、いままでは遊びに費やしていた時間も勉強に充てるようになります。相当な無理をして私生活を犠牲にして、勉強したのだと読み取れます。

現代においても受験は人生で重要な選択の一つですので、受験生だけでなく周りの人々も躍起になることもあると思います。それに受験生がプレッシャーを感じてしまうこともあるのではないでしょうか。

周りの受験生が自分より賢く見えてしまう

また試験会場で出会った神学校の受験生と会話を交わして、ついさっき解いた問題を答え合わせし合う場面があります。

相手がハンスが知らない単語をいくつか答えただけでハンスは相手が自分よりも格段に知識を持っていて、神学校になど受かりっこないと悟ります。

結局は2位の成績で入学できますので、これも受験のプレッシャーによる思い込みだと言えます。

まとめ

車輪の下』は全体的に暗い話ですが、ハンスの心情を通して、受験学校教育精神疾患に対しての重いメッセージが込められた物語ですので、読み応えがありました。

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